2010年4月20日火曜日

フルデジタルと物理の話し

私の職場で現在乳腺超音波検査を行なっている、エコー機は古いです。と言っても、10年は経っていません...が、フルデジタルではありません。


さて、機械の更新に伴って何社かのデモを去年の秋から年末にかけて行なって、購入も決まったようです。

めでたし、めでたし。


と、思っていたのですが...最近気になることがあります。
デモ機を使用している時に思ったのですが、新しい機械は色々な画像処理が施してあり、キレイに見えます。
キレイに見えて、アーチファクトが無くなるのです。
必要なアーチファクトもあるのです。(乳腺超音波検査では特に)
空間コンパウンドという多段送受信の機能ですが、腹部などでは消化管ガスなどの下は見えなかったのですが、これがあると回り込んで、色々な方向から超音波を送受信できるのでガスの下も見えやすくなる...と言うものだと思います。
で、乳腺ですが、腫瘤の下の後方エコーが減弱するのは超音波の透過率が悪いものが腫瘤を形成している、と考えます。
でも、この空間コンパウンドのおかげで(?)後方エコーの減弱もあまり目立たない気がします。
それからハローですが...これは物理で言うと後方散乱が起こっているわけです。
超音波の波長より小さな不均一な物体(細胞組織のような..)の集合体に超音波が入射すると周囲に反射、散乱が起こるわけです。
これも、あまり目立たないような気がします。
気のせいかな?

それから、あるメーカーは音速補正というものが付いていました。
生体内は軟部組織の平均的な音速として1530m/sで計算して画像を構築しています。
が、脂肪は音速が少し変わって1430m/sな訳です。
脂肪肝などはこの音速補正が入ると、今までよりは多少違った絵が見られるのかもしれません。しかし、乳腺では...
硬い腫瘤の下は後方エコー減弱するのですが、欠損までしない限り大胸筋のあたりは結構観察できるのです。それで、硬い腫瘤の中はそこだけ音速が速いわけです。と言うことは、そこだけ早く超音波が受診されることになり実際の位置より少し絵が上に歪むのです。
お分かりいただけますでしょうか?
硬いものは早く伝わるので、周囲より早く送受信がなされ、早く像を結ぶのです。なので画像上は歪んでいますが、実際に歪んでいるわけではないのです。

私は結構これを見て、腫瘤の下が歪んでいると線維成分が多いのかなぁなんて考えていたのですが、音速補正が入るとこんなことも無くなるのかなぁ...なんて考えたりします。


カンファレンスなどで新しい機械の画像を見ると、石灰化もキレイに描出されてるし、いいなぁと思う反面ハローや後方エコーが少し分かりにくいなぁ...と感じたりもします。
新しい機械の画像に慣れないといけません。

慣れるまでは、コンパウンドの処理を外して検査をする方が慣れ親しんだ画像かもしれません。技術の進歩に付いて行くのは大変です。
物理の勉強もたまにはしましょう...。

2 件のコメント:

  1. こんばんは!
    先日、地域で開催している乳腺超音波研究会で症例検討会を行ったのです。9症例中3例が同一施設のものだったのですが、明らかな画像の違い(脂肪層の明るさなど)があり、その原因について検討をしようということになりました。
    そこで問題になったのが、装置のpresetです。
    じつは私の施設でも同一メーカーの装置を3台使用しているのですが、もともと設定されていたpresetがどうも私の好みではなく、それぞれの装置に私バージョンのpresetを別設定しています。
    中心周波数、ダイナミックレンジ、フレイムレート,ゲイン、それにマーサさんがいっていたようにさまざまな機械的な画像処理が加わると、
    本当に画像がかわるんですよね。
    特に、乳腺の濃縮のう胞、石灰化、きついMPは、どの条件で観察するかで、ずいぶんと画像が変わってしまうので、日常的に何がこのUSにとって大事な要素なのかを判断しながら、装置の設定をしなければ、見えるはずのものも見えませんね。
    ましてや、病変があった場合には、推定される組織型がかわってくる可能性もあるということです。
    presetの設定も、好みの問題だけではなく、物理的な特性をしっかり理解したうえで設定する必要があるということですね。

    返信削除
  2. 匿名さん

    コメントありがとうございます。
    そうですね...機械の設定は難しいですね。それぞれの機械の特性もあるでしょうし...好みもそれぞれあるでしょうし。
    それぞれの機械の特性を良く知り、機械に使われるのでなく、人が機械を使いこなさないといけませんね。
    (最近は色々な便利な機能がついて、機械に使われ気味なのかもしれません)

    乳腺エコーは他の領域に比べて、本当に超音波の基本のキが詰まっている検査だと感じています。
    超音波の特性、原理をよく分かっていないと、アーチファクトも利用したり、読むことができません。
    超音波検査にやはり物理の知識が必要なんだ...と感じる今日この頃です。

    返信削除