2010年3月17日水曜日

ギモン解決....?

去年のSt.Gallenで....

手術で腫瘍を切除した際の切除面である断端部に関する議論では、浸潤がんにおいて断端陽性の場合には、全員一致で再切除すべきという結論になった。また、非浸潤がん(DCIS)においては、再切除すべきが8割となっていた。「DCISは治る病気。そのため、断端を陰性にすることが重要と」Morrow氏はコメントした。一方、非浸潤性小葉がん(LCIS)においては、再切除は必ずしも必須ではないと合意された。



この会議内容ををうけて、私の素朴なギモンを昨年11月にupしたのですが...
なぜLCISは断端陽性でも追加切除の必要はないのか? 
私の中で、沸々とギモンがわき上がっていました。
なぜなら、私の中ではDCISとLCISは発生場所が違うだけで、浸潤していない癌は癌。と思っていましたし、浸潤癌だと乳管癌より小葉癌の方が怖い印象があったのです。
小さな細胞をバラバラと巻いたように広がるし、どこまで広がっているかが分かりにくい感じがして、なんとなく乳房全摘のイメージ(あくまでも私の)でした。
なので、この文献を読んだ時に、なぜ? と思ってしまいました。

今日、先生と話をする機会があり質問してみました。


回答は...

LCISは必ずしも浸潤癌になるわけではない...とのこと。確率の問題なのでしょうか?DCISは浸潤癌として再発する率が高いので必ず断端はマイナスにしておく必要があるのだそうです。

非浸潤癌の時は小葉癌はおとなしいということ?でしょうか....


半分納得。 でも、まだなんだか? 


発生機序のもんだいでしょうか?謎が解けたような、そうでないような? 

5 件のコメント:

  1. 切除断端についてですが…。
    ”浸潤癌で断端陽性”というのは”浸潤癌の浸潤部分で陽性”という意味だと思います。浸潤部を残すのは危険なので再手術すべきということです。浸潤癌の乳管内進展部分(非浸潤癌の部分)で断端陽性でも必ずしも再切除せよとはなっていないはずです。この場合、遺残が多いと推測される場合は再手術を勧めることがありますが、わずかの遺残なら電子線照射の追加で経過をみることが多いです。
    ”非浸潤性乳管癌で断端陽性の場合は再切除した方がよい”というのは、癌の全体が非浸潤癌だった場合の話です。非浸潤性乳管癌は完全切除すれば100%治癒するので、局所再発、特に浸潤癌での再発を避けるべき、ということです。もともと浸潤癌だった場合は、非浸潤癌部分で遺残して仮に局所再発しても全体としては予後には影響しないというエビデンスがあるので、全体が非浸潤癌の場合とは意味合いが異なるのです。
    一方、全体が非浸潤性小葉癌というケースはきわめてまれです(偶然、浸潤癌を切除した標本内に発見されるケースがほとんど)。また米国では非浸潤性小葉癌は癌とみなさないことが多いので断端に偶然存在していても厳重に経過観察するということが多いのだと思います。
    おわかりいただけましたでしょうか?

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  2. hidechin先生

    丁寧な説明、ありがとうございます。
    St.Gallenの会議の結果をWebsiteで見てずっと疑問に思っていました。 手術のことは検査には直接関係ないのだけれど、やはり「なぜ?」と思い気になっていました。


    ここで、一つ質問しても良いですか?
    「非浸潤性小葉癌」は偶然切除標本に発見されることが多いと本にも書いてあるのですが...では、そもそもなぜ、この「非浸潤性小葉癌」はアメリカなどでも癌と見なされていないことが多いのでしょうか?
    過形成・異形性の範疇なのでしょうか?
    癌というからには、細胞レベルで癌の条件をそなえているのだと考えるのですが....

    非浸潤性小葉癌が必ずしも浸潤性小葉癌になるわけではないということなのでしょうか....

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  3. 日本の乳腺病理の第一人者の坂元吾偉先生もそのようなお話をしていたのをお聞きしたことがありますが、どうしてなのかはよくわからないんです。また、非浸潤性乳管癌に対しても日本とは違う感覚で捉えているようなんです。もしかしたら、非浸潤癌は転移能力を持っていないので、一生悪さをしない可能性もあるからかもしれません。
    日本でも某Drは、このような非浸潤癌を”がんもどき”と表現しています。
    でもアメリカの考え方が全て正しいとは思いません。このような考え方の甘さが局所再発の多さにもつながっているような気がするからです。

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  4. 追加です。NCIのサイトによると、非浸潤癌に対する考え方は以下の通りです。
    ”非浸潤性乳がんには2つのタイプがあります:
    非浸潤性乳管がん(DCIS)は、非浸潤性で、乳管の内膜に異常細胞が発見される状態のことをいいます。異常細胞は乳管以外の組織へは拡がっていません。DCISは乳管から周囲の組織へ拡がる浸潤がんとなる場合もあります。現時点では浸潤がんになるのを予防する方法は確認されていません。
    非浸潤性小葉がん(LCIS)は、乳房小葉に異常細胞が見受けられる状態です。めったに浸潤性のがんになることはありませんが、しかしながら一方の乳房で小葉がん腫があると、いずれかの乳房で乳がんになるリスクが高くなります。”
    やはり、非浸潤性小葉癌はめったに浸潤しないということが大きいようですね。

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  5. hidechin先生

    ありがとうございます。
    最近、病理にも興味が出て本を読んだりもするのですが、難しいですね。
    異型小葉過形成(ALH)とLCISはどちらにしても、リスクが高いことは間違いないようですね。

    度々の回答ありがとうございました。

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