2011年10月18日火曜日

境界明瞭粗ぞう vs 境界不明瞭 vs ハロー vs 前方境界線

境界部の表現に平滑、粗ぞう、明瞭、不明瞭と言うのがあると思います。

明瞭で平滑なのか粗造なのか。
平滑っていうと鉛筆でくりっと線が描ける感じでしょうか?
粗ぞうは、ガサガサした感じで一本の線ではなくガサガサした感じで絵を描くってかんじでしょうか?


充実腺管癌などくりっとしているけど境界がガサガサした感じ...みたいなのが粗ぞうと言えるかもしれません。


では、そこにハローがつくとどうなるか?


教科書的にはハローがあるものは境界部の判定が困難で、境界不明瞭とする。となっていると思うのですが....
実際検査をしていて、境界明瞭粗ぞうで、ハローありと感じる腫瘤って遭遇します。

よくあるのが、圧排性発育のまさに充実腺管癌など。で、いわゆる辺縁部高エコー帯がある訳です。

ムムム...
これはリンパ球の浸潤などで、エコー上後方散乱がおきてハローが見えていると感じています。
実際がん細胞の浸潤のこともあるでしょうが、それ以外でもハローのような高エコー帯はできると思います。


そして、前方境界線です。以前も「なんだ」と書いたことがありますが...

意外に遭遇するのが、検査をしていてハローもあって、前方境界線も断裂しているように見えて浸潤癌だと思ったら実はDCISだった。
...みたいな。

これはどうしてそう見えたのでしょうねぇ?

炎症や、線維化などが進み、そこで性質の違うものがあると超音波は高エコーに描出されます。それが、高エコー帯の用に見えるということでしょうか?
そして、それらが前方境界線の断裂のように見える。ということでしょうか?

嫌なことに、良性の時にもこれがあったりして...


じゃぁ、JABTSの診断樹はどうなるんだ! と言うことになりそうですが...
そこは、やはり周囲を見ながら、じっくり判定して行くしかないと思います。
コレがあるから、判定はコレ。と機械的ではなく、周りをみながら...ということでしょうか? 



ややこしいですね。

ガン細胞の浸潤だけが高エコー帯を作る訳ではないんですよね。

いろんなものが混ざっているから、高エコーに描出されるのです。



超音波って、難しいですね。


でも、楽しいかも。

2 件のコメント:

  1. >Marthaさん
    超音波画像を見ながら病理所見を推測する視点、素晴らしいと思います!
    たしかに充実腺管癌などで病理学的にはがんの浸潤範囲自体は境界明瞭なのに超音波画像では脂肪層にハローのような高エコーを伴っているケースは時々目にします。以前経験した症例では周囲にリンパ球浸潤を伴っていたため、このせいだと判断できたのですが、まったくリンパ球浸潤がみられないケースもあります。先日の製薬会社主催の症例検討会で提示されたケースでは、その高エコー部分は浮腫性の変化だったと言っていました。充実腺管癌は急速に増大することも多いですので周囲に浮腫をきたすことがこの高エコーの原因なのかもしれないとその時に思いました。
    いずれにしてもこのようなケースで見られる高エコー帯は、がんの浸潤によるハローに比べると幅が広くて淡い印象があります。Marthaさんが経験した症例ではいかがでしたか?
    また、DCISで前方境界線が断裂しているように見えることはありますよね。こういう場合は浸潤がんだとだまされてしまいます。原因の一つとしてクーパー靭帯の中の乳管からDCISが発生するケースが考えられます。ここから発生したDCISは、完全に乳腺の外側に浸潤巣を形成しているように見えてしまいます(以前症例検討会で見たことがあります)。クーパー靭帯の乳腺への付着部を確認できれば予想が可能な場合があるかもしれません。また、ほとんどが脂肪化したような乳腺では脂肪内に退縮した乳腺(乳管)が残っています。ここから発生したDCISは浸潤の有無を判断するのが非常に困難です。
    いずれにしても超音波検査は奥が深いというか難しいですよね。経験を積めば積むほど難しいと感じると思います。でも病理所見を見て、超音波の見え方の原因がわかるととても面白く感じることがありますよね。日々の経験を今後の診療に生かすようにお互いに頑張りましょう!

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  2. hidechin先生

    コメントがとっても遅くなってすみません。
    実は先生のコメントがスパム扱いになっていて、気がつきませんでした。あまりスパムのチェックをしてなかったので...

    浮腫でも高エコーの要に見えるのですね...勉強になります。

    本当に超音波検査は奥が深く、自分の判断が間違うたびに勉強になります。
    難しいけれど、それだけ魅力的な検査でもあります。(ただ、独りよがりにならないように気をつけないといけませんね。)

    超音波画像を見て、それだけで判ったような気になりがちなのですが、そこで何が起きているかを想像しながら検査を進めていくことはとても大切なことだと思います。ハロー=浸潤ではなく、何か組成の違う物が入り交じっている...と。

    遅くなりましたが、本年もよろしくお願い申し上げます。
    先生のブログも楽しみにしています。

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